無断駐車はなぜ『停め得』なのか?法的リスクと正しい対処法
私有地や月極駐車場での無断駐車問題がSNSで話題化。警察が動かない理由、逆に被害者が加害者になる法的リスク、そして正しい対処法を整理する。

2025年10月、X(旧Twitter)で「私有地への無断駐車と警察対応」が大きな議論を呼びました。警察の民事不介入原則により「停め得」とされる現状に不満が集まり、被害者が逆に加害者になってしまう法的リスクも話題となっています。本記事では、事例や法的リスク、正しい対処法を徹底解説します。
SNS で広がった「無断駐車と警察の壁」
2025 年 10 月 1 日、X 上でかみよう氏(@kamiyousan)が「私有地や有料駐車場を不当に使われても警察が動かないなら、一体いつ動くのか」という投稿を行い、大きな注目を集めました。
引用やリプライでは「盗難車や不審車両の可能性と通報すれば警察は対応する」という知見や、「勝手に想像を付け加えて通報すると逆に通報者が責められる」という警告も広まりました。
一方で別の投稿(@dc5_6700)では「タイヤの空気を抜くと器物損壊」「レッカー移動は窃盗」「塞げば逆に違法」といった指摘が並び、被害者が加害者扱いされる理不尽さが共感を呼びました。SNS では「停め得社会はおかしい」という怒りの声と、「通報文言を工夫する必要がある」という実務的知恵が同時に拡散されていったのです。
民事不介入の原則と法的リスク
日本の警察は「民事不介入」の原則を重視します。契約関係や損害賠償といった民事トラブルは司法や当事者同士で解決すべきとされ、警察は基本的に動きません。これが無断駐車のやっかいな点です。
しかし、被害者が自力で解決しようとすると刑事責任を問われる可能性があります。具体例を整理すると以下の通りです。
- タイヤの空気を抜く → 器物損壊罪(刑法 261 条)
- 勝手にレッカー移動する → 窃盗罪(刑法 235 条)
- 出入口を塞ぐ → 不法監禁罪や強要罪に問われるリスク
- 車体へ張り紙を貼る → 軽微でも器物損壊と見なされることがある
つまり「正当防衛」や「被害防止」のつもりで行った行為が、法的には犯罪行為となりかねません。これは「やられ損」の背景にある構造的な問題といえます。
正しい対処法と実務的な工夫
では、無断駐車にどう対応すべきでしょうか。専門家や実務経験者の意見をもとに整理します。
- 警察に通報する際の文言
「盗難車の可能性がある」「不審車両が放置されている」など、刑事事件に直結する要素を伝えることで警察が動きやすくなる。 - 110 番通報を活用
110 番は記録が残るため、警察は対応せざるを得ない状況になりやすい。 - 管理会社や大家に連絡
契約上の管理者を通じて対応することで、法的リスクを回避できる。 - 内容証明郵便で警告
弁護士や行政書士を通じて法的に有効な警告を行うと効果的。 - 防犯カメラや証拠保全
警察や裁判での対応を見越し、写真や映像で無断駐車の記録を残す。
こうした手順を踏むことで、警察の「動かない壁」を越えつつ、自らが法的リスクを負わない形で対処できます。
海外との比較と制度的課題
海外では、日本とは異なる制度が一般的です。
- 米国や欧州では、私有地での無断駐車はレッカー移動が認められている場合が多く、警察が即時に関与するケースも珍しくありません。
- 日本は民事と刑事の線引きを厳格に行うため、結果的に「停め得」と批判される状況を生んでいます。
制度の違いは、単に文化の差ではなく、治安維持や被害者保護の観点から改善が求められる領域でもあります。
まとめ
無断駐車は「一見些細な迷惑行為」に見えて、被害者が泣き寝入りを強いられやすい構造的な問題です。
日本では民事不介入原則が壁となり、被害者が自力解決すると逆に犯罪者扱いされるリスクまで存在します。
正しい対処法は「警察に刑事事件の可能性を伝える」「管理会社や法的手続きを通じる」こと。感情的な行動は危険です。
今回の SNS での議論は、個人が直面する法的リスクと制度的な不備を可視化しました。制度改善を求める声を社会に広げつつ、現場で被害を受けた人は冷静で法的に安全な対応を心がけることが重要です。