Electronic Arts、約8兆2000億円でサウジ政府系ファンドらに買収合意
Electronic ArtsがPIF・Silver Lake・Affinity Partnersによる総額約8兆2000億円の買収に合意。現金による非公開化投資としては史上最大規模で、CEOのAndrew Wilson氏は続投予定。

2025年9月29日、ゲーム大手Electronic Arts(EA)がサウジアラビアの政府系ファンドPIFと米国投資会社Silver Lake、Affinity Partnersによるコンソーシアムに買収されると正式発表しました。買収額は約550億ドル(約8兆2000億円)で、全額現金による非公開化投資としては史上最大規模とされています。
買収の概要と金額規模
2025 年 9 月 29 日、Electronic Arts(EA)は Public Investment Fund(PIF)、Silver Lake、Affinity Partners の 3 社による買収に合意しました。買収総額は約 550 億ドル、日本円で約 8 兆 2000 億円に達し、すべて現金での取引とされています。現金による非公開化投資としては過去最大規模であり、ゲーム業界のみならず投資市場全体でも歴史的な案件です。EA は全株式を買収され非公開化されるため、株式市場から姿を消すことになります。
EA は世界的に知られる多数の IP を保有しており、サッカーゲーム「FIFA(現 EA Sports FC、累計 3.25 億本超販売)」、ライフシミュレーション「The Sims(累計 2 億本超)」、人気 FPS「Battlefield(累計 8,870 万本超)」、バトルロイヤル型の「Apex Legends」、さらに「Madden NFL(累計 1.30 億本超)」「Need for Speed(累計 1.50 億本超)」「Dragon Age」「Mass Effect」といった幅広いジャンルのヒットシリーズを展開しています。(vgsales.fandom.com)
加えて、2025 会計年度(FY25)における EA の純収益は 74.63 億ドル、Net Bookings は 73.55 億ドルに達しました。(ir.ea.com) 特に NFL/アメリカンフットボール系タイトルは単体で 10 億ドルを超える Bookings を生み出しており、EA の収益構造の中核を担っています。こうした豊富な IP と収益基盤こそが、総額約 8 兆 2000 億円という巨額買収額の正当性を裏付けています。
買収主体と政治的背景
コンソーシアムを構成するのは、サウジアラビア政府系ファンドである PIF(Public Investment Fund)、米国のプライベートエクイティ大手 Silver Lake、そして Affinity Partners です。Affinity Partners はドナルド・トランプ前大統領の娘婿ジャレッド・クシュナー氏が設立したことで知られ、政治的にも注目度の高い存在です。PIF は過去数年にわたりゲームや e スポーツへの投資を拡大しており、SNK や任天堂株の取得でも話題となりました。今回の案件は、その戦略の延長線上にあり、世界的なゲーム IP を通じたソフトパワーの拡大を狙っているとみられます。
経営体制と CEO 続投
買収後も EA の CEO である Andrew Wilson 氏は職務を継続する予定です。同氏は発表にて「EA は数億人のファンに象徴的な IP と体験を提供してきた。この買収はその功績を称えるものであり、今後もエンターテインメントやスポーツ、テクノロジーの分野で革新的な体験を創造していく」とコメントしました。投資家側のコメントでは、PIF 副総裁 Turqi Alnowaiser 氏が「ゲームと e スポーツ分野への強いコミットメントをさらに進める」と強調し、Silver Lake の Egon Durban 氏は「EA 事業成長に向け多額の投資を約束する」と述べています。Affinity Partners のクシュナー氏も「EA ゲームで育ち、子供と一緒に楽しんでいる」と発言し、個人的な愛着を示しました。
買収スケジュールと今後の見通し
この買収はすでに EA 取締役会の承認を受けており、今後は各国規制当局および株主の承認を経て進められます。完了予定は 2027 年度第 1 四半期とされ、約 1 年半から 2 年のプロセスが見込まれます。買収後は EA の普通株式が非公開化され、株主構成は完全に投資コンソーシアムに移行します。業界関係者の間では、開発スタジオへの投資強化、クラウドゲームや AI 活用の拡大、e スポーツのグローバル展開が予想されます。一方で、政府系ファンドの影響力強化や米国政治との関係性が議論を呼ぶ可能性もあります。今回の大型案件は、ゲーム業界の M&A トレンドにおいても象徴的な一歩となりそうです。
まとめ
EA の買収は、ゲーム業界史上でも最大級の規模であり、PIF を中心とした政府系資本が世界的 IP を握ることの意味は極めて大きいといえます。ファンにとっては今後のゲーム展開がどう変化するかが関心事であり、投資家にとっては市場から EA が消える影響が注目されます。完了予定は 2027 年度第 1 四半期で、ゲーム産業における資本構造の変化と地政学的要素が絡む長期的な動向として注視が必要です。