平均給与は過去最高でも手取りは減少?数字に隠れた生活実感
国税庁の調査で民間の平均給与は477万5000円と過去最高を更新。しかし社会保険料や税負担、物価上昇により手取りはむしろ減っている。統計と生活実感の乖離を徹底解説。

国税庁の調査で2024年分の民間平均給与が477万5000円と1997年以来の最高水準を更新しました。しかし、社会保険料や税金、物価高騰の影響で「手取り」が減少している現実があります。本記事では「平均給与過去最高」と「手取り減少」という相反する現象を整理し、統計と生活実感のギャップを考察します。
平均給与は過去最高水準に
2024 年分の国税庁調査によると、民間給与所得者約 600 万人の平均給与は 477 万 5000 円で前年比 3.9%増、4 年連続の増加となりました。これは 1997 年以来の水準であり、名目上は「給与アップ」が続いています。男女別では男性が 587 万円、女性が 333 万円で、格差は 254 万円と依然として大きい状況です。業種別では電気・ガス・水道業が 832 万 4000 円でトップを維持し、宿泊・飲食業は 279 万円と約 3 倍の差が出ています。背景には最低賃金の引き上げや人手不足があり、給与総額は押し上げられていますが、この「平均値」には高収入層の影響が強く、自営業者は含まれていません。統計としては好調を示していても、必ずしも国民全体の実感と一致しているわけではありません。
なぜ手取りは減っているのか
平均給与が上昇しているにもかかわらず、実際に家庭に残る「手取り」は伸び悩み、場合によっては減少しています。理由の第一は社会保険料の増大です。厚生年金保険料率は 2017 年に 18.3%へ到達し、健康保険料も年々上昇傾向にあり、給与の増加分がそのまま吸収されています。さらに、所得税・住民税といった直接税の負担に加え、復興特別所得税も継続中です。新宿会計士氏の試算によれば、平均給与 478 万円の場合、会社が負担する総人件費は 559 万円ですが、従業員の手取りは 373 万円に留まり、約 185 万円が税金・社会保険料として差し引かれています。つまり、名目給与が上がっても 3 分の 1 以上が国に吸収される構造なのです。さらに手取りからは消費税や電気料金に含まれる再エネ賦課金といった間接的な負担も生じ、実際に自由に使えるお金はさらに少なくなっています。
平均給与と手取りの内訳(試算)
項目 | 金額 |
---|---|
会社の総人件費 | 559万円 |
支給される平均給与(額面) | 478万円 |
税金・社会保険料控除 | ▲185万円 |
実際の手取り | 373万円 |
物価上昇と実質賃金の低下
もう一つの大きな要因が物価上昇です。2024 年の消費者物価指数は前年比 2〜3%上昇しており、給与増加率 3.9%と比較するとほぼ相殺されていることが分かります。特に食品やエネルギーといった生活必需品の価格上昇は家計に直撃し、統計上の賃金上昇が生活の向上に直結していません。さらにインフレは資産を持つ層には追い風となる一方、現金・預貯金しか持たない層には実質的な生活水準低下をもたらします。「給与が上がったはずなのに生活が楽にならない」という声は、この名目と実質の差に由来します。
統計と生活実感のギャップ
平均給与の上昇は一見すると明るいニュースですが、実際の生活実感とは乖離があります。理由は、統計が「平均」であり高収入層に引っ張られる傾向があること、自営業者や非正規雇用者の状況を反映していないことに加え、可処分所得(手取り)が増えていない点です。SNS 上でも「数字上は豊かになっているが現実感がない」「インフレと税金に吸われているだけ」といった声が相次ぎました。こうしたギャップは、政策立案においても「名目賃金」ではなく「実質可処分所得」を軸に据える必要性を示しています。
まとめ
2024 年の日本の平均給与は 477 万 5000 円と過去最高を更新しましたが、手取りは増えず、むしろ生活は厳しくなっています。社会保険料や税金の負担、インフレの影響により、給与アップが生活向上につながっていないのが現実です。今後は賃上げと同時に税・社会保障負担の見直し、物価対策を含めた総合的な政策が不可欠です。統計と生活実感の差を直視しなければ、国民の不満や不信は一層強まるでしょう。